1975 年 72 巻 6 号 p. 673-683
emotional stress が胃液分泌に如何に影響するかを手術症例で調べた. stress としては手術直前の情動不穏状態に着目し, これを emotional stress とみなし, 手術侵襲をphysical stress とみなし胃液ペプシンと酸分泌を調べた. 対照には安静時の結果を当てて比較した. emotional stress では血漿 11-OHCS 値の軽度増加が, 潰瘍, 非潰瘍の如何に拘らず認められた. この僅かな副腎皮質ホルモン増加に反応して, 十二指腸潰瘍および胃•十二指腸合併潰瘍例で著明な塩酸とペプシン分泌の亢進が認められた. これら疾患では胃底腺が副腎皮質ホルモモン変化に敏感である証拠である. emotional stress による胃液分泌はアトロピンで抑制されるが, 安静時の抑制に比べると軽度である. 潰瘍の成因に占める emotional stress の意義を検討した.