1975 年 72 巻 9 号 p. 1144-1151
Vx2カルチノームを家兎膵管内に注入移植して, 移植膵癌を作成した. 膵管内の腫瘍細胞は膵実質内に浸潤発育したが, 膵管閉塞の存在が浸潤を促進した. これには, i)膵管末端の変性崩壊部からの腫瘍細胞の実質への逸脱, ii) 腫瘍の膵管壁への直接の着床破壊と実質への浸潤, の2つの機序がある. 膵実質内へ浸潤した腫瘍は, 膵内血管, 膵内リンパ管を介して膵内を非連続性に浸潤した. 即ち, 膵管, 膵内血行路, 膵内リンパ路は膵悪性腫瘍の膵内浸潤路と考えられる. 腫瘍からかなり離れた部位の膵内脈管内にも腫瘍細胞が発見されるから, 膵悪性腫瘍の根治手術施行にあたつては, 膵内における腫瘍の非連続性浸潤の存在を念頭に置く必要がある.