日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
Radioimmunoassay 法によるα-fetoprotein の原発性肝癌診断への応用
湯本 泰弘難波 経雄田中 義淳武田 和久太田 康幸三谷 健
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1976 年 73 巻 6 号 p. 659-667

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抄録

α-Fetoprotein (AFP) を radioimmunoassay (RIA) 法の開発により, 微量の血清AFP濃度(S-AFP)を検出することが可能となつたので, 肝臓癌診断のためのS-AFP測定の臨床的意義について検討を加えた. 高濃度S-AFP (>1.0×104ng/ml) の稀釈には正常馬血清を使用することにより, 血清中の実際のAFP濃度と測定値は直線関係を示したので, 高濃度S-AFPの稀釈には馬血清を用いた.
臨床経過を追つて経時的にS-AFPを測定した原発性肝癌49例では, 7.5~9.5×105ng/mlに分布した. このうち37例 (75.5%), 肝炎および肝硬変の157例中1例 (0.64%), と肝転移をもつ胃癌52例中2例 (3.8%)においてS-AFPは2000ng/ml以上に達した. 他の転移性肝癌15例のS-AFPは30ng/ml以下の値を示した.一方, 原発性肝癌49例中12例 (24.5%) のS-AFPは2000ng/ml以下にとどまつた. 臨床経過をおつて経時的にS-AFPを測定し, S-AFPが低値より漸次上昇を続ける症例では肝癌を疑い, 局所診断を行うことによつて, その有用性を実証した.

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