日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
慢性膵炎における膵血管造影所見の検討
神谷 知至安楽岡 滋奥野 府夫石井 裕正土屋 雅春平松 京一
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1977 年 74 巻 12 号 p. 1708-1714

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抄録

慢性膵炎患者29名を対象に, 選択的腹腔動脈・上腸間膜動脈造影 (SCA-SSMA) を施行した. 16例にはさらに背側膵動脈にカテーテルを挿入し, 超選択的造影 (SDPA) を施行しえた. これらの所見と内視鏡的膵胆管造影法 (ERCP), 経ロブドウ糖負荷試験 (OGTT), P-S 試験成績等を比較検討した. SDPAではSCA-SSMAと比較し, 膵固有動脈の口径不整・狭窄, hypervascularity, 実質相の濃染の出現率が高く, 特に濃染は81%と有意に (P<0.05) 高かつた. 病悩期間が10年以上の例ではSCA-SSMAでhypervascularity, 濃梁が全く見られず, 周囲動脈の不整が70%と特徴的であつた. ERCP高度変化群では膵固有動脈径不整50%, 周囲動脈不整が83%であり, 軽度変化群ではこれらは全く認められなかつた. OGTT施行例では, 一般に耐糖能異常が強いほど膵固有動脈径不整, 周囲動脈不整が高頻度となり, hypervascularity, 濃染は低くなる傾向がみられた. P-S試験施行6例では一般に膵固有動脈径不整, 濃染が多く, 飲酒歴を有する例では膵動脈径不整, 濃染が高頻度であつた. 膵血管造影 (とくにSDPA) は慢性膵炎の診断法の一つとして非常に有用である

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