1977 年 74 巻 2 号 p. 174-181
典型的潰瘍性大腸炎22名, 直腸S状結腸炎9名および直腸炎68名からなる広義の潰瘍性大腸炎患者99名に行なつた直腸生検263回の945組織標本について組織学的検索を行なつた. 半数以上の標本に腺管の大型化があつたが, これらの中には単なる再生現象である嚢胞状拡張の他に腺管の大型化と同時に腺管上皮の丈が延長して, ある種の大腸polypの腺管と極めて類似するものがあり, これを過形成腺管と名づけた. 過形成腺管の出現は炎症の強さや病型とは必ずしも直接関係せず, 下痢・粘血便等の初発症状からおよそ6ヵ月後に出現率が増加し, 高齢者に多い傾向があつた. 過形成腺管と潰瘍性大腸炎の癌化との関係について考察を行なつた.