1977 年 74 巻 6 号 p. 709-719
N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine水溶液をラットに注腸して大腸腫瘍を発生させ, これらについてオートラジオグラムによる細胞動態学的検索を行なつた.その結果, 大腸癌と腺腫巣との間に細胞動態学的な差は認められず, 正常粘膜とは異なり細胞分裂の特定の部位はなく, 腫瘍細胞の寿命は一定ではなかつた.また, 異型は認められないが分裂部位が表層近くまで拡大しているところが発見された.以上のことより, 腫瘍の発生過程において, まずサイミジン取込み部位が腺窩底から表層近くに拡大し, 小隆起が形成され, 表層でもサイミジンの取込みがみられるようになり, 異型が出現して腫瘍が完成するものと推定された.