日本消化器病学会雑誌
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慢性肝炎長期観察例の検討
142例の組織学的経過とHB抗原との関係について
中島 正男伊藤 喜一吉場 朗熊田 博光
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1977 年 74 巻 9 号 p. 1172-1178

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抄録

今回調査の対象とした慢性肝炎は, 2回以上の肝生検により組織学的に経過が追跡できた142例である. 慢性肝炎はヨーロッパ分類に従い, 初回と最終回の組織診断の差により進行, 不変, 改善とした. 142例中67例 (47.2%) に進行がみられ, 経過年数の長いもの程進行率が高くなる傾向がみられた. 肝硬変となつたものは142例中26例 (18.3%) で, 1~3年の経過で硬変化する率が高かつた.
このうちHBs抗原持続陽性41例 (28.9%) では, 進行率63.496, 肝硬変化率34.1%で陰性例に比し有意の高い悪化率を示した. この41例中25例にHBe抗原, HBe抗体を, 23例にDane粒子関連のDNA polymeraseを測定した. 測定の時点でHBe抗原陽性の3例では肝炎が進行性であるのに反しHBe抗体陽性の4例では安定した傾向がみられた. HBe抗原陽性例は全例Dane粒子関連のDNA polymeraseが共存しており, 両者の密接な関係が示唆された.

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