肝疾患に対するブドウ糖負荷時の膵内分泌機能を病態別に検討し以下の結果を得た.
(1) 血糖は急性肝炎, 慢性肝炎, 肝硬変症の順に上昇し, いずれも対照群との間に有意の差異を示した. (2) 血中IRIは, 血糖値と平行した変化を示し, いずれも対照群に対し有意の高反応を示した. 血中IRGは糖負荷による抑制をうけたが, 120分目においても対照群に比べ有意の高値を持続した. (3) I/Gモル比は急性および慢性肝炎では糖負荷後上昇を示したが, 肝硬変症では30分目が対照群よりも低下した. (4) 活動型慢性肝炎の血中IRIおよびIRGはいずれも非活動型と比べて有意の上昇を示し, I/Gモル比は糖負荷後30分目は低値を, 60~120分目では逆に高値を示した. (5) 非代償型肝硬変症の血中IRIは代償型に対し有意の低反応を示したが, IRGは逆に有意の上昇を示し, I/Gモル比は前者で低下を示した.
以上より, ブドウ糖負荷に対する血中IRI, IRGおよびI/Gモル比の変化は病態によつて異なる態度を示し, これは肝疾患における糖代謝異常の発現とも密接な関係を有するものと推測される.