日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
原発性肝癌における 1-(2-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil 代謝の特性とその臨床効果
渡辺 明治芳原 準男長島 秀夫
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 75 巻 12 号 p. 1947-1959

詳細
抄録

原発性肝癌における 1-(2-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil (FT-207) の代謝動態の特性とその臨床効果について, 胃, 腸および肺癌の症例を対照として検討した. 肝硬変を伴う肝癌例のFT-207静注後の血中消失率(K) は, 肝機能検査に異常のみられない対照例に比べて明らかに低値を示し, 連日経口投与した際にもその血中濃度が次第に増加した. 対照例でのK値は, インドメタシンやトコフェロール•ニコチネートの3日間の前投与でそれぞれ低下あるいは増加したが, 肝癌例ではこれら薬剤の前投与でもK値に明らかな変化がみられなかつた. FT-207投与が臨床的に有効であつたのは, 原発性肝癌10例中1例で, その成績は消化管癌に比べて劣つた. 経口投与中の血中FT-207濃度の経時的変化を観察した結果, 肝癌例では対照例より高値を示すことが多いが, 血中濃度の高低やK値と臨床効果や副作用出現との関連性は明らかでなかつた.

著者関連情報
© 財団法人 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top