1978 年 75 巻 8 号 p. 1248-1259
私共は40~44歳までの男性3例, 女性1例の計4例の成人輪状膵を経験した. 内3例は不完全輪状膵,1例が完全輪状膵で, いずれも十二指腸下行脚に存在し, 乳頭は3例が輪状膵肛門側に位置していた. 症状は全例とも十二指腸潰瘍, 胆石症等の合併症によつて修飾される傾向を示したが, 3例に上腹部痛, 悪心嘔吐など20年余に亘る反復性の経過を認めた. 本症の診断は3例に可能で, 低緊張性十二指腸造影による十二指腸下行脚外側からの切れ込み様あるいは楔状の辺縁平滑な限局性狭窄像が最も重要である. 治療は胃切除術 (B-II), 輪状膵離断切除術, 十二指腸拡張術, あるいは手術操作を加えなかつたものなど症例に応じ対処した.