1979 年 76 巻 3 号 p. 716-727
胃のみに限局した家族性びまん性若年性ポリポーシスの1家系を報告する.18歳の女子で,貧血,低蛋白血症,知的発育障害,茶褐色頭髪などの臨床所見を呈した.切除胃には有茎,無茎の無数のポリープが房状にみられ,その表面には不整な小陥凹が,割面では多数ののう胞が確認された.病理組織学的には,正常腺管の強い過形成とのう胞状形成,間質の浮腫など若年性ポリープの所見であつた.長兄も知的発育障害と茶褐色調で粗な頭髪を有し,14年前の14歳ですでに胃亜全別術をうけ,びまん性胃ポリポーシスが確認され,母は胃癌にて若年死している点が注目された.本症例をfamilial juvenile polyposis of the stomachと診断し,若年性ポリポーシスにおける本例の位置づけについて考察を加えた.