1979 年 76 巻 5 号 p. 1104-1115
臨床的に脂肪の生理的消化吸収機能が加齢によつて境界域程度に障害される点に注目し,脂肪吸収の各段階,とりわけ腸粘膜内代謝に及ぼす影響について実験的および臨床的検討をおこなつた.in vitroにおいて老齢ラットでは長鎖脂肪酸の腸粘膜への取り込み低下に比し,TGへのエステル化の低下が著明であつた.腸粘膜内脂肪再合成酵素系のなかでMG-acyltransferase活性は老齢ラットで有意に低値(P<0.02)を示し,ヒト空腸粘膜においても加齢と共に低下傾向(P<0.05)を示した.以上より加齢による脂肪の消化吸収障害がMG-acyltransferase活性低下による腸粘膜内脂肪再合成過程の障害であることを明らかにした.