胃潰瘍形成時における胃α-L-フコシダーゼ活性および胃粘膜糖蛋白について検討した.実験潰瘍はウイスター系雄性ラットにヒスタミン,およびビタミンAを投与し作製した.ヒスタミン投与後早期よりα-L-フコシダーゼ活性は上昇した.ビタミンA投与時には胃壁蛋白結合型フコースの減少と胃液遊離フコースの増加がみられた.またビタミンA大量投与時の胃粘膜のDEAE-カラムクロマト法を行ない糖蛋白分析を行なうと3つの画分に分かれ,第一画分においてフコースの著しい減少がみられた.以上から,α-L-フコシダーゼは胃潰瘍形成時に胃粘膜糖蛋白代謝を司さどり,潰瘍形成に重要な働きをなす攻撃因子の1つと考えられた.