日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
肝障害多発地域(五島列島富江町)における住民のHBs抗原,抗体の検索とその臨床的意義
楠本 征夫
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キーワード: 肝細胞癌, 肝硬変, HB抗原
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1979 年 76 巻 9 号 p. 1782-1792

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抄録

長崎県五島富江町の潜在性肝疾患とHBウイルスとの関係を検討した.(1)住民3,521名(5~87歳)中HBs抗原(+)は5.5%,抗体(+)22.0%.抗原陽性率の年齢分布は20代の10.9%を頂点とし以後減少した.(2)20歳以下のHBウイルス感染者の30%はCarrierとなる.(3)抗原(+)73名の追跡で64名が陽性持続,9名が抗体転化,陰転,不定を示した.(4)家族調査で抗原集積家族は母子感染,その他は水平感染が推定された.(5)抗原陽性は肝疾患家族歴(+)25.2%,既往歴(+)16.5%,肝機能異常(+)27.3%と高率であつた.(6)組織像を確認した肝癌1,肝硬変4,慢性肝炎4,肝線維症1例でHBs抗原(+)であつた.以上のごとく肝疾患の原因の一つにHBウイルス関与が強く示唆された.

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