日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
原発性肝細胞癌の発癌母地に関する臨床病理学的検討
HBs抗原と肝硬変の合併について
木村 洸賀古 真鳥居 正男高築 勝義藤原 研司堺 隆弘遠藤 康夫鈴木 宏織田 敏次
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1979 年 76 巻 9 号 p. 1836-1841

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抄録

最近15年間の東大第一内科における原発性肝細胞癌患者59例を対象に,肝硬変とHBs抗原との関連性を検討した.
HBs抗原は,肝硬変合併群49例では,血清に30%,組織に46%の陽性率が認められたが,非合併群10例では,血清,組織のいずれにも検出されなかつた.両群間に家族歴,診断時平均年齢,臨床症状,肝機能検査成績,診断以降の生存期間,死因,剖検所見に差がみられたが,診断時の平均年齢は,HBs抗原の有無に関係し,HBs抗原陽性群は発癌年齢も低い.その他は肝硬変の有無に基づくものと推定された.
したがつて,HBウイルスは,肝硬変のない肝では原発性肝細胞癌の発癌に関連した主要因とは考えにくい.また,HBウイルスに関係した肝硬変では,肝硬変とあいまつて発癌に関与すると推定された.

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