日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
肝硬変症における高γグロブリン血症の成因機序について
鈴木 光二岩間 章介鈴木 直人武者 広隆小藤田 和郎奥田 邦雄
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1980 年 77 巻 10 号 p. 1581-1588

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抄録

大腸菌に対する抗体(大腸菌抗体)を急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変症(代償性)患者の血清について赤血球凝集反応を用いて検索したところ,肝硬変症では他疾患と比べて有意に高い出現率を示した.大腸菌抗体陽性の肝硬変症では陰性例に比べて血清γグロブリン値,IgA値は高値を示し,IgGも高い傾向であつた.肝硬変症で,ICG 15分血中停滞率と血清γグロブリン,19G, IgA値が良く相関した.大腸菌抗体は腸管由来の抗原に対する抗体であることを考慮すると,上記の結果は肝硬変症では腸管由来の抗原に対する抗体の産生が促進し,それが高グロブリン血症の成因の1つになつていることを示唆している.肝硬変症では肝内血流異常の為に腸管由来の抗原物質の処理不活化が低下していると考えられる.

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