1980 年 77 巻 10 号 p. 1604-1614
松本地方における成人の散発性急性A型肝炎24例についてその疫学的,臨床的事項をB型との比較により検討した.散発性急性ウイルス肝炎122例中A型は24例(19.7%)でその発生頻度は季節・年度により変動していた.anti-HAV保有率は30歳代を境に大きく相違し,A型肝炎の発症はanti-HAV保有者の少ない20歳代に多くみられ,家族内感染は1家系にみられた.A型の臨床的特徴は黄疸,発熱,悪心・嘔吐が高頻度であり,TTT,血清IgMはB型に比し有意に高値を示した.A型の臨床経過は一般にB型に比し改善が早く,組織学的にも重症例や慢性化例は認められなかつたが,A型のうちTTT, Al-Paseの著明な高値を示す例ではS-GPTの正常化が遅れる傾向がみられた.