潰瘍性大腸炎をはじめ,その病因として自己免疫学的機序が考えられる疾患において,局所組織中に存在するリン脂質の免疫学的な役割を検討した.すなわち,同種モルモット組織(腸,肝,脳)より抽出したリン脂質の蛋白抗原及び腸内細菌共通抗原(ECA)に対する遅延型過敏症増強活性を検討した.その結果,各組織とも蛋白抗原に対して免疫増強活性を有したが,特に酸性リン脂質分画が強い活性を持つことが明らかとなつた.また腸由来リン脂質はECAに対しても同様の免疫増強作用を有することが示され,潰瘍性大腸炎に於て,局所腸リン脂質がautoimmunoadjuvantとして何らかの役割を持つことが示唆された.ECA感作モルモットの大腸において軽度であるが慢性の炎症性変化が認められた.