1980 年 77 巻 4 号 p. 591-602
胆汁うつ滞症における赤血球浸透圧抵抗増強の機序を研究し,その臨床的意義について考察した.Lp-X濃度が高い程,赤血球膜コレステロール,リン脂質の増加が著明で,赤血球浸透圧抵抗も増強するが,PTCドレナージ等で急速に閉塞を解除すると,赤血球浸透圧抵抗は正常に向い,膜コレステロール,リン脂質は等モルで減少した.増加したリン脂質は殆んどレシチンであり,そのアシル基脂酸構成はLp-Xに類似していた.胆汁うつ滞時の赤血球浸透圧抵抗の増強はLCAT活性の変動以外にLp-Xが赤血球膜とfusionする為と考えられ,胆汁うつ滞症の赤血球浸透圧抵抗を測定することは閉塞の程度,減黄効果の判定に有力な手段であると考えられた.