日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
肝癌の血管造影門脈所見の意義
門脈所見からみた手術適応ならびに予後との関係
岡崎 正敏森山 紀之山田 達哉
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1980 年 77 巻 5 号 p. 758-767

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抄録

肝切除例27例を中心に組織学的に証明された肝細胞癌50例の門脈造影像からみた手術適応及び予後との関係について検討した.肝癌の血管造影に際して明瞭な門脈造影像をうるために,従来の薬物血管造影法に,若干の工夫を加えた.肝癌の門脈造影所見を無所見群と有所見群の2群に大別し,さらに,逆流性造影群,副血行路性造影群,陰影欠損群,線状陰影群,造影陰性群の5つに細分した.肝癌が門脈内腔に腫瘍塞栓を作つていると考えられる有所見群の頻度は36例(74%)と高率であつた.この36例のうち,門脈の病理学的検索がなされた20例はいずれも,門脈内に腫瘍塞栓の存在が確認された.有所見群の肝癌36例のうち切除されたものは14例にすぎなかつた.また切除不能であつた22例中5例は,肝動脈造影像では分らなかつた小転移巣が存在したため,実際には切除不能に終つた.また,この有所見群のものはたとえ肝切除が行なわれても,残肝再発例が多く,無所見群の症例に比べると予後不良であつた.無所見群の肝癌13例は,全例切除可能であつた.しかも殆んどの症例は予後が良好であつた.したがつて,肝癌の血管造影診断に際しては,従来の肝動脈造影による腫瘍の区域診断のみならず,明瞭な門脈造影像を描出し,詳細に読影することが重要である.

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