1981 年 78 巻 1 号 p. 9-19
胃潰瘍が胃活動に及ぼす影響を知るため,cinchophenによる実験的胃潰瘍をイヌにつくり,潰瘍形成前後における24時間の胃活動を,無麻酔,無拘束下で比較観察した.潰瘍の発生部位は胃角部と幽門近傍で胃運動のひずみの生じる部位であつた.潰瘍発生後の収縮曲線は空腹期パターンの違いから3型に分類された.また潰瘍発生後,対照でみられたBER(basic electric rhythm)間隔の日内リズムが変化し,24時間の経過が平坦化した.BERの伝導速度が潰瘍発生後遅延したことは,胃排泄遅延の一因と考えられた.筋層に達する深い潰瘍近傍の電極から導出されたBERの形態に変化がみられたことから,潰瘍近傍における縦走筋の興奮異常が示唆された.