1981 年 78 巻 10 号 p. 1936-1946
D-galactosamine家兎急性肝不全モデルを用いて,消化管出血の発生機序について,血液凝固•線溶動態の面より検討し,さらにヘパリン投与の影響を観察した.早期よりendotoxin血症が出現し,末期には高率に血管内凝固症候群(DIC)が合併した.28例中24例(86%)に出血性びらんを伴う消化管出血が発生し,そのうち前庭部に2例,十二指腸に1例UL II~IVの潰瘍の出現をみた.出血性びらんは,胃体部•胃底部に好発した.潰瘍例全例と出血性びらん2例では周辺の粘膜•粘膜下層に多発性微小血栓が証明された.ヘパリン投与時には,粘膜障害は軽度にとどまり,血栓および潰瘍形成は阻止された.本症の発生には,DICに伴う微小循環障害の関与が大と考えられる.