日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
急性肝不全における消化管出血合併に関する実験的研究
第1報:主として凝固•線溶動態の面からの検討
植村 正人福井 博山田 拓司松村 雅彦喜多 公雄伊藤 秀次花田 一宏松井 勉田村 雅宥辻井 正松森 武
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1981 年 78 巻 10 号 p. 1936-1946

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抄録

D-galactosamine家兎急性肝不全モデルを用いて,消化管出血の発生機序について,血液凝固•線溶動態の面より検討し,さらにヘパリン投与の影響を観察した.早期よりendotoxin血症が出現し,末期には高率に血管内凝固症候群(DIC)が合併した.28例中24例(86%)に出血性びらんを伴う消化管出血が発生し,そのうち前庭部に2例,十二指腸に1例UL II~IVの潰瘍の出現をみた.出血性びらんは,胃体部•胃底部に好発した.潰瘍例全例と出血性びらん2例では周辺の粘膜•粘膜下層に多発性微小血栓が証明された.ヘパリン投与時には,粘膜障害は軽度にとどまり,血栓および潰瘍形成は阻止された.本症の発生には,DICに伴う微小循環障害の関与が大と考えられる.

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