発癌物質であるDietylnitrosamineをラットに投与し,発癌過程で出現する大型肝細胞集団の細胞増殖動態及び部分肝切除後の反応性増殖活性を3H-thymidine autoradiographyによつて検索し,正常肝細胞及び肝癌細胞の増殖活性と対比しながら解析した.大型肝細胞集団は,組織学的に小結節を形成する大型肝細胞結節と,小結節を形成しない大型肝細胞領域の2つのタイプに分けられ,これらの細胞増殖活性は,正常肝細胞に較べ,前者では低く,後者では高い結果を得た.術後の反応性増殖活性の亢進は,肝癌では全く認められなかつたのに対し,大型肝細胞結節及び大型肝細胞領域では正常肝細胞と同様に認められた.したがつてこれらの両者では細胞の増殖制御機構は保たれている点で肝癌とは明確に一線を画すると結論した.