日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
消化器疾患におけるAldolase isoenzymeの臨床的研究
筋肉型Aldolaseによる消化器癌の診断を中心として
浅香 正博長瀬 清斎藤 雅雄高橋 建二森岡 正信宮崎 保白石 忠雄
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1981 年 78 巻 3 号 p. 693-700

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抄録

Aldolaseのisoenzymeの一つである筋肉型ALD (M-ALD)を直接定量し得るradioimmunoassay法を開発し,諸種消化器疾患患者血清について測定を行なつた.正常域は健常人41名の平均値±2SDより,130-210ng/mlとして検討を行なつた.非癌性消化器疾患102例ではその99%が正常値を示した.これに対して消化器癌患者121例ではその82%に血清M-ALD値の上昇がみられた.胃癌ではstage Iで29%,stage IIで61%,stage IIIで93%,stage IVでは100%の異常率を示した.血清M-ALD値は癌疾患において,血清ALD活性と相関を示したが,異常率はほぼ2倍であつた.肝疾患においては血清ALD活性の上昇にかかわらず血清M-ALD値は正常値を示した.LDH, CEA値との比較では癌患老における異常率はほぼ2倍であつた.血清M-ALD値は癌化学療法によりAFP, CEAなどに比し早期に下降する傾向がみられた.開腹手術後1~7日間は血清M-ALD値は良悪性疾患を問わず上昇し,これは手術による筋肉への侵襲のため筋肉組織より血中に放出されたものと思われた.

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