1982 年 79 巻 1 号 p. 1-8
各種胃疾患において,胃内3点(胃体中部大弯側,胃角部,前庭部大弯側)と十二指腸球部粘膜の生検材料を用いてUDP-galactosyl transferase活性を測定し,防御因子としての粘膜内糖蛋白質の生合成能を検討した.正常胃粘膜では胃内3点での本酵素活性に差はなく,瘢痕期胃潰瘍の前庭部,ビラン性胃炎の前庭部,十二指腸潰瘍の前庭部と十二指腸球部で酵素活性が高く,糖蛋白質生合成能の亢進が示唆された.胃潰瘍辺縁粘膜では,治癒期に高く,瘢痕期に低い傾向を示し,その合目的性が注目された.また,萎縮性胃炎では胃体部において酵素活性が低く,胃癌では胃内3点とも酵素活性が高い傾向を認めた.