1982 年 79 巻 1 号 p. 28-37
胃全摘後の消化吸収障害を,主に消化に関与する膵酵素の面から検討した.対象は,Double tract法16例,Roux-en Y法5例である.これらに対し(I)BT-PABA単独投与法,(II)試験食併用BT-PABA試験を行い,1時間毎6時間,分割採尿し経時的な動態をみた.(I)法では,健常者に比し胃全摘例で総PABA排泄率に差異は認められなかつたが,(II)法では有意に尿中PABA排泄率は低下し,しかもRoux-en Y法は,Double tract法と比べ有意に低値を示した.さらに,1日糞便脂肪および窒素量を測定しBT-PABA試験の成績と比較した.胃全摘とくにRoux-en Y法では,脂肪量と(II)法の成績共に異常を示す症例が多くみられたことから,十二指腸を食物が通過する術式の意義を明らかにした.