1982 年 79 巻 11 号 p. 2063-2070
Cysteamine hydrochloride (以下Cyst.と略す)投与による十二指腸潰瘍発生機序について,実験的に胃酸,ペプシン活性の測定を行ない,同時に迷走神経切離術(全幹迷切術)の影響について検討した.さらにCyst.の消化管内の局在を知るためにトレーサー実験として,35S-Cysteamineを投与し,その臓器分布とオートラジオグラフィーによる胃,十二指腸における局在部位について検討した.その結果,Cyst.には胃,肝,脳と比較して十二指腸粘膜内へ高濃度にとりこまれるという特異性があり(p<0.01),さらにとりこまれたCyst.は十二指腸に長く留まることが認められた.一方Cyst.投与によりペプシン活性は有意(p<0.05)に上昇したが,胃酸は上昇傾向を示したものの有意差は認められなかつた.また全幹迷切群は潰瘍の発生を防止できなかつた.