日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
胆管閉塞時の耐糖能異常について
南條 輝志男
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 79 巻 8 号 p. 1603-1611

詳細
抄録

胆管閉塞時の耐糖能異常の機序に検討を加えるため,(1)臨床的には,各種肝疾患(閉塞性黄疸,肝硬変,慢性肝炎)における経口糖負荷試験(OGTT)時の30K反応性グルカゴン(IRG)反応を比較し,(2)家兎を用いる動物実験では,総胆管体外ループ形成術を施行し,胆汁流入状態がIRG分泌動態に及ぼす影響や,グルカゴン,インスリンの肝におけるclearance rate,胆汁中IRG,IRI濃度等を調べた.
その結果,(1)総ての肝疾患において高IRG血症が認められたが,OGTT時のIRG奇異反応は閉塞性黄疸のみにみられた.また胆汁うつ滞時の高IRG血症は大分子量IRGにより構成されていた.(2)総胆管閉塞時にはヒトと同様の高IRG血症とOGTT時IRGの奇異反応がみられ,総胆管体外ループ開放時には低IRG血症とOGTT時IRGの抑制反応がみられた.胆管がグルカゴンやインスリンの代謝経路として重要であり,胆汁中IRG,IRI濃度は各々,血中の約200倍,4倍であることも確認した.
以上より,胆管閉塞時の耐糖能異常には胆汁うつ滞に起因する大分子量IRGにより構成される高IRG血症が関与する新たな機序が存在すると考える.

著者関連情報
© 財団法人 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top