日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
腸管のMacromolecule漏出の実験組織化学的研究
5-Fluorouracilによる影響について
木曽 宗昭大塚 幸雄
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1982 年 79 巻 9 号 p. 1707-1718

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抄録

小腸の組織障害は実験的に5-fluorouracil(5-FU)を25mg/kg/day 1日1回5日間腹腔内注入して作製した.空腸組織障害過程を微細構造的変化との関連について検討した.小腸の腸管組織障害に基づく組織線溶とhorseradish peroxidaseの動態からexogenous macromoleculeの漏出機序を検索した.細胞化学的変化と組織plasminogen activatorの遊離は5-FU初回投与から出現し,形態学的変化はこれに遅れた.5-FUによるexogenous macromoleculeの漏出増加は投与2回目にHrp陽性顆粒細胞の増加と,組織 plasminogen activatorの遊離と一致を示した.しかし細胞障害が強くなるとむしろ抑制を示した.t-AMCHA は5-FUによる空腸組織阻害とexogenous macromoleculeの漏出を阻止し得なかった.α-TN は5-FU の直接作用である代謝抑制の変化以外に細胞機能としての細胞化学的変化とexogenous macromoleculeの漏出をほぼ完全に抑制した.exogenous macromoleculeの漏出増加を来たす5-FUの組織障害は粘膜固有層におけるlysosome酵素の遊離による二次的障害であることを示唆し得た.

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