1983 年 80 巻 12 号 p. 2485-2492
食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法施行後の11剖検例に対して 胃•食道壁の詳細な病理学的検討を行い, 次のような結論を得た. 1. 多くの症例で食道壁における組織障害は強く, 深くて広い潰瘍範で, 炎症細胞浸潤は外膜までおよび縦隔炎もみられた. これらの変化はパオスクレー®を用いた硬化療法例により強くみられた. 2. 静脈瘤内血栓形成は広範囲にみられ, これは薬剤の量というよりはむしろ組織障害の程度と関係しているように思われた. 薬剤の量が少なくても止血の目的を達している症例もみられた. 3. 今後, 治療後の多数症例の検討とともに治療効果のみられれた長期生存例の検討など十分な病態の解析を行い, 治療適応範囲を拡大すべきであろうと考えた.