1983 年 80 巻 12 号 p. 2533-2541
各種肝疾患487例の血清 ferritin を測定し, とくに6カ月以上経過を追跡しえた慢性肝疾患195例での変動を5型に分類し, それぞれの予後を検討した. 非活動性慢性肝炎のほとんどは正常範囲内変動を示したが, 活動性では正常範囲を越えて変動する例が多く, 高値持続例の2/3は肝硬変へ移行した. 非代償性肝硬変は代償性に比べて変動する傾向大で, 高値持続例の半数以上は死亡し, 予後の推定に有用と思われた. 肝細胞癌では, AFP低値例では診断的意義を有したが, 肝硬変の経過中発癌した例の大部分は正常範囲内の変動を示し, 早期診断の指標とはなりえず, 切除あるいは抗癌剤投与例での効果判定にも, AFPほど有用な指標とはいえなかつた.