1983 年 80 巻 2 号 p. 140-146
ラットに拘束水浸を負荷し, 肉眼的に胃粘膜病変を認める以前の胃粘膜表面の微細構造の変化につき, 走査型電子顕微鏡を用いて経時的に観察した. その結果, 拘束水浸負荷初期には, 表層上皮細胞からの粘液顆粒分泌の亢進が認められ, これにひき続き表層上皮細胞の平坦化, 胃小窩の開大が出現した. さらには表層上皮細胞の球状化, 脱落という過程を経て表層上皮の剥離が観察されるようになつた. この表層上皮の剥離が肉眼的に認められる胃粘膜病変にあたると考えられた. 又, このような変化は幽門部に比し, 胃体部において, より早期に認められた.