1983 年 80 巻 6 号 p. 1299-1308
意識下に犬の膵の血行動態の観察を試みた. 安静, 無刺激下の膵基礎血流量は水素ガスクリアランス法で, そして食餌摂取前後の膵血流変動は交叉熱電対法で, いずれも微細な電極を膵実質内に埋め込んだ慢性犬にて, それぞれ観察した. まず, 意識下膵基礎血流量は50.7±17.3ml/min/100gを示した. 膵基礎血流測定値に影響を与えていると思われる諸因子について多変量解析法にて検討したところ, pentobarbital により有意の血流抑制が認められた. 次に, 食餌刺激前後の膵血流反応をみると, 食餌摂取と共に急激な血流増加が起こり, この反応は速やかにピークに達し, その持続は数時間に及んだ. その半数は2相性の血流増加パターンを示し, 複数の機序の存在が示唆された.