日本消化器病学会雑誌
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胃十二指腸クローン病の内視鏡的及び病理学的診断
田中 昌宏木村 健斉藤 建
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1983 年 80 巻 8 号 p. 1581-1589

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抄録

12例の小腸及び大腸クローン病に対し, 2年4カ月の間に胃十二指腸内視鏡検査を31回施行した. 胃から89個, 十二指腸から21個の直視下生検を行なつた. 検体は, 50枚の連続切片にされ, H-E染色にて, 非乾酪性肉芽腫の有無, 粘膜の炎症度そして粘膜のリンパ管拡張度について検討された. 内視鏡的に58% (7例) に胃病変を, 42% (5例) に十二指腸病変が発見された. これら病変は, 幽門前庭部と十二指腸近位側に存在し, 注意深い観察によつて始めて認められるような微小な形態を示した. 便宜的に, 発赤斑, アフタ様びらん及び隆起性病変に分類したが, 経時的な観察により, これら微小病変は, 発赤→アフタ様びらん→隆起性病変に発展する事が確認された. 非乾酪性肉芽腫は, 83% (10例) の胃粘膜に, 67% (6例中4例) の十二指腸粘膜に認められた. また正常粘膜からも18%の頻度で非乾酪性肉芽腫が証明された. 胃病変群は, 非乾酪性肉芽腫検出率が高く, 十二指腸病変群は, リンパ管拡張度が高度である事が特徴的であつた. これら, 胃十二指腸のクローン微小病変の診断には, 非乾酪性肉芽腫の証明と経時的観察により病変の質的, 量的な進展を証明する事が必須であると結論された.

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