1984 年 81 巻 10 号 p. 2507-2515
肝硬変症患者における胃排出能を99mTc-DTPAを用いて検討した. 胃排出像と胃排出曲線を核医学データ処理装置で定量的に解析し, 胃排出時間T 1/2をその代表値とした. 肝硬変症では健常者に比べ有意に胃排出遅延が認められた. また肝硬変症においては胃あるいは食道静脈瘤を合併している方に, より胃排出遅延傾向が認められた. また肝硬変症の中でも胃炎, 胃潰瘍などの胃病変を合併している群に, より胃排出傾向が認められた. 胃排出時間が80分以上の著明な排出遅延の症例では約80%に胃病変の合併が認められた. 以上より肝硬変症患者での高頻度の胃病変の一成因として胃排出遅延の関与が推察された.