1984 年 81 巻 3 号 p. 864-873
大腸支配動脈の閉塞と腸管内圧の上昇が, 虚血性大腸炎の発症に及ぼす影響を検討するため, 動物実験を行なつた. 50匹のラットを5群に分け, 第1群では左側結腸の辺縁動脈を2カ所で結紮した. 第2群では直腸結紮のみを行ない, 第3群では辺縁動脈の結紮と直腸結紮を併せ行なつた. 第4群では辺縁動脈の結紮後, 緩下剤を経口投与, 第5群では緩下剤の投与のみを行なつた. 結果は, 第1群は20%, 第2群10%, 第3群80%, 第4群20%, 第5群0%に大腸に虚血性病変を認めた. これらの実験結果より, 虚血性大腸炎は, 大腸に慢性的な虚血準備状態が存在し, さらに腸管内圧の上昇が加わつた場合に生じ易いことが結論づけられた.