1984 年 81 巻 7 号 p. 1554-1558
最近, 胃粘膜に含まれる内因性 prostaglandins (PGs) による adaptive cytoprotection が明らかにされ, 内因性PGsの生理的意義の重要性が認識されるに至り, 胃粘膜PG生合成系を刺激する要素が注目されている. 本研究では, 各種実験潰瘍を抑制する2-Benzyloxycarbonylphenyl trans-4-guanidinomethylcyclohexanecarboxylate hydrochloride のβ-cyclodextrin 包接化合物 (TA903) のラット胃粘膜PGE2およびPGI2量におよぼす影響を indomethacin および拘束水浸ストレス負荷実験において検討した. その結果, TA903は, indomethacin あるいは拘束水浸による胃粘膜PGE2およびPGI2の減少を抑制する傾向を示した. このことは, TA903の抗潰瘍作用の機序のひとつとして, 胃粘膜PG合成系を介する経路の存在が示唆された.