1985 年 82 巻 10 号 p. 2582-2593
慢性肝疾患における血清Tyr濃度を Wong らの蛍光法を用い測定した. 対象は慢性肝炎88例 (147回), 肝硬変69例 (132回), 肝性脳症6例 (12回), 肝癌合併10例 (21回) である.
血清Tyrは慢性肝炎活動型, 代償性肝硬変で高値を示し, 非代償性肝硬変では明らかに有意の上昇を示すものが多く, Fischer らのBCAA, AAA比 (MR) とTyrは有意の逆相関を示した. またTyrは HPT, ChE活性などと相関を示すが, GOT, GPTなどとの相関は認められなかつた.
これらの結果から血清Tyrの測定は Fischer らのMRとほぼ同等の臨床的意義を有するもので, 肝の代謝機能の低下の程度をよく反映し, 有用な肝機能検査であると考えられた.