アルコール多飲慢性肝疾患患者における肝内胆汁うつ滞の発生に, 催胆汁うつ滞因子が関与するか否かを検討するため, 患者末梢血リンパ球にエタノールと carrier 蛋白を添加して48時間培養し, その培養上清を Sephadex G-75 カラムで分画して, 催胆汁うつ滞因子の検出に用いた. その結果, 一定分画を正常ラットの腸間膜静脈に注入すると, 有意に胆汁排泄が抑制され, 肝組織電顕像においても毛細胆管の拡張, microvilli の減少または消失など, 肝内胆汁うつ滞に特徴的な病理組織的変化が認められた. また, 発症初期における患者血清を同様に分画して, ラット腸間膜静脈に注入しても, 胆汁排泄の抑制および肝組織の形態学的変化が観察された.
これらの結果は, 薬物アレルギー性肝炎のみでなく, アルコール性肝障害に見られる肝内胆汁うつ滞の発生にリンホカインの一種, 催胆汁うつ滞因子が関与する可能性があることを示唆するものである.