日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
アルコール多飲慢性肝疾患における催胆汁うつ滞因子の検討
溝口 靖紘加藤 寛子筒井 ひろ子宮島 慶治新井 孝之阪上 吉秀東森 俊博針原 重義山本 祐夫門奈 丈之本田 良寛森沢 成司
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 82 巻 3 号 p. 441-449

詳細
抄録

アルコール多飲慢性肝疾患患者における肝内胆汁うつ滞の発生に, 催胆汁うつ滞因子が関与するか否かを検討するため, 患者末梢血リンパ球にエタノールと carrier 蛋白を添加して48時間培養し, その培養上清を Sephadex G-75 カラムで分画して, 催胆汁うつ滞因子の検出に用いた. その結果, 一定分画を正常ラットの腸間膜静脈に注入すると, 有意に胆汁排泄が抑制され, 肝組織電顕像においても毛細胆管の拡張, microvilli の減少または消失など, 肝内胆汁うつ滞に特徴的な病理組織的変化が認められた. また, 発症初期における患者血清を同様に分画して, ラット腸間膜静脈に注入しても, 胆汁排泄の抑制および肝組織の形態学的変化が観察された.
これらの結果は, 薬物アレルギー性肝炎のみでなく, アルコール性肝障害に見られる肝内胆汁うつ滞の発生にリンホカインの一種, 催胆汁うつ滞因子が関与する可能性があることを示唆するものである.

著者関連情報
© 財団法人 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top