日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
胃腸疾患における血清胆汁酸分画測定と経口胆汁酸負荷試験の臨床的意義
松崎 靖司大菅 俊明井廻 道夫正田 純一三田村 圭二小沢 邦寿
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 82 巻 5 号 p. 1369-1379

詳細
抄録

諸種の胃腸疾患48例の血清胆汁酸分画を高速液体クロマトグラフィー法にて測定した. その結果, 盲係蹄症候群, 広汎腸切除例, 胃切除例において, 血清胆汁酸のうち遊離型分画の相対比率増加, および二次胆汁酸である deoxycholic acid の相対比率の増加を認めた. この現象は腸内細菌過剰増殖による胆汁酸脱抱合, および7α-脱水酸化 (二次胆汁酸生成) 亢進の結果と推測された. 一方腸疾患12例にUDCA300mg経口負荷試験を施行した. その結果, 回盲部疾患4例 (クローン病1例, 回盲部を含む広汎回腸切除1例, 回盲部切除1例, 回盲部潰瘍1例), 広汎小腸障害2例 (広汎空腸切除1例, 蛋白漏出性胃腸症1例) に胆汁酸血中濃度曲線の Area Under Curve (AUC) 低下, 即ち胆汁酸吸収低下を認めた.
従つて血清胆汁酸分画測定は, 腸内細菌過剰増殖を推定する上で有用であり, 一方経口胆汁酸負荷試験は, 回盲部の吸収試験として利用可能と考えられた. この両方法を併用すれば吸収不良症候群と腸内細菌過剰増殖症候群の鑑別診断に利用できる可能性があると考えられた.

著者関連情報
© 財団法人 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top