1985 年 82 巻 6 号 p. 1512-1519
著者は, 消化性潰瘍における secretin の役割を究明するために, 消化性潰瘍患者69例 (十二指腸潰瘍50例, 胃潰瘍19例) と対照12例を用いて, 血清 secretin の変動とその形態学的変化を検討した. 十二指腸酸性化後の secretin 分泌反応は, hypersecretor 群 (H群) で低値を示した. 粘膜内 secretin 含有量は, 対照群よりも消化性潰瘍群で, かつH群で低値を示した. 対照群と消化性潰瘍群の粘膜内 secretin 含有量と, secretin 細胞数とはともに有意の正の相関がみられ, しかも消化性潰瘍群は対照群に比べ細胞内の secretin 量が少かつた. 以上の結果よりみて, 消化性潰瘍の成因の一つとして secretin の産生障害の存在が示唆され, とくにH群ではその傾向が強かつた.