日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
肝性脳症発現における大腸内嫌気性菌の意義および Vancomycin hydrochloride の肝性脳症治療効果
多羅尾 和郎沢上 健豊田 浩二桜井 彰林 和弘池田 俊夫岡田 哲郎伊東 達郎鈴木 慶石渡 悦郎
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1985 年 82 巻 8 号 p. 1875-1883

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抄録

最近糞便中の最優勢菌である嫌気性グラム陰性桿菌の Bacteroides にも Urease 活性の存在が証明された. したがつて肝性脳症時には, 従来考えられてきた好気性グラム陰性桿菌ではなく, 嫌気性菌が主としてアンモニアを産生することが考えられ, この問題を解明するためわれわれは Vancomycin hydrochloride という好気性グラム陰性桿菌は抑えないが嫌気性桿菌を抑える非吸収性抗生物質を肝性脳症患者に繰り返し投与したところ, その都度, 症状, 血中アンモニア値, 脳波等の改善を認め, それとともに糞便中の Bacteroides を主とする嫌気性菌の激減を認めた. 一方, 好気性グラム陰性桿菌はほとんど変動しなかつた. 嫌気性グラム陰性桿菌は肝性脳症の発現に重要である.

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