1985 年 82 巻 8 号 p. 1889-1893
肝硬変20例, 慢性肝炎20例, 正常者20例, 合計60例の上腸間膜静脈血流について検討した. 検討にあたつては, 血流を血管断面積, 血流速度の2因子に分けた. 肝硬変群では, 血管断面積は1.13±0.54cm2と増加しており, 正常群 (0.72±0.23cm2), 慢性肝炎群 (0.83±0.34cm2) と比較し, 統計学的に有意であつた. 血流速度は14.1±3.7cm/secであり, 正常群 (14.8±3.9cm/sec), 慢性肝炎群 (13.4±3.1cm/sec) との間に有意差は認められなかつた. 血管断面は, 肝硬変群で円に近くなり, すなわち, 断面の長径/短径は, 1.21±0.12で, 正常群 (1.36±0.18) との間に有意差をみた. 慢性肝炎群は, 1.31±0.29であつた. この形態の変化は, 門脈圧の亢進を反映していると考えられた.