1986 年 83 巻 1 号 p. 26-32
肝硬変症患者の胃粘膜血行動態および酸素需給動態を検討する目的で, 臓器反射スペクトル解析法を内視鏡下に応用し, 健常者45例および肝硬変症患者46例の胃内10点における粘膜血液量, および粘膜内ヘモグロビン酸素飽和度を測定した. その結果, 肝硬変症患者の胃粘膜血液量は, 健常者に比し多く, 一方, 粘膜内ヘモグロビン酸素飽和度は低かつた. これは, 胃粘膜内毛細血管拡張と血流のうつ滞によるものと考えられた. また, 肝硬変症において食道静脈瘤の有無で胃粘膜血行動態は異なつており, 食道静脈瘤を有する群は, 静脈瘤を有さない群に比べて粘膜血液量は軽度低下していたが, 粘膜内ヘモグロビン酸素飽和度はさらに低く, 胃粘膜酸素需給が食道静脈瘤を有さない群より悪いことが明らかとなつた.