1986 年 83 巻 10 号 p. 2161-2173
肝切除時の細網内皮系 (以下網内系と略) 機能の変動を検討するために, 正常肝及びCCl4硬変肝ラットを対象としコンドロイチン硫酸鉄コロイドを用い経時的に網内系機能を測定した, 硬変肝ラットの術前の phagocytic index (P.I.) は正常肝ラットに比べ有意に低下を示したが, 主に肝 Kupffer 細胞の機能低下によるものと考えられた. 更に硬変肝ラットでは脾及び肺における uptake 率が増加し, 特に肺での増加が著明であつた. 肝切後のP.I.は正常肝, 硬変肝共に術後早期より低下し, その低下率は肝切除量に相当する以上の減少率であつた. しかし正常肝30%切除群では3日目, 70%切除群では5日目に単開腹群と同程度にまで回復したが, 硬変肝では回復の遅延傾向を認めた. 術後の uptake 率は両群共肝での減少に伴い肺では増加し, 特に大量切除, 硬変肝切除で顕著であつた.