日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
クローン病の病因としての Mycobacteria に関する研究
芳賀 陽一
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 83 巻 11 号 p. 2325-2333

詳細
抄録

近年 Chiodini らがクローン病 (CD) 組織より Mycobacterium (M.) paratuberculosis 類似菌を分離したと報告し, 注目を集めている. 著者はCDの病因と Mycobacteria との関連性について検討を加えた. ELISAによるCD患者血清の抗体価は, 対照に比較してIgG•IgA抗体価が高値(p<0.05) であつたが, CDと潰瘍性大腸炎では差がなかつた. マイコバクチン添加 Herrold 培地を用いた糞便•組織の培養では, 1例のCD生検組織から Ziehl-Neelsen (Z-N) 染色陽性球菌が分離されたが, Chiodini らの分離菌とは形態•性状が異なつていた. 抗 M. paratuberculosis 抗体を用いたPAP法では, いずれのCD組織も染色されなかつた. 以上より M. paratuberculosis 類似菌がCDの病因である可能性は少ないと推定された.

著者関連情報
© 財団法人 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top