1986 年 83 巻 11 号 p. 2365-2374
肝生検にて脂肪肝と診断された, アルコール性脂肪肝17例, 肥満または糖尿病を合併したアルコール性脂肪肝7例, 非アルコール性脂肪肝19例, 計43例の手掌紅斑出現率を検討した. 手掌紅斑出現率は, アルコール性脂肪肝で82%, 肥満または糖尿病を合併したアルコール性脂肪肝では71%と高率で, 非アルコール性脂肪肝の16%に比べて, それぞれ危険率0.5%, 2.5%で有意差があつた. 手掌紅斑を伴うアルコール性脂肪肝5例の血中•尿中エストロジェン値は正常であり, アルコール性脂肪肝群は標準体重前後の例が多く低栄養状態は考えられず, 従つてアルコール性脂肪肝の手掌紅斑出現の成因は, 従来のエストロジェン, 低栄養以外の成因によるものと思われた.