1986 年 83 巻 12 号 p. 2538-2544
75g経口糖負荷試験後約2年間における, 肝硬変症の肝性脳症発症率と死亡率を調べた. 肝硬変症を耐糖能曲線によつて分類した4群の中で, 糖尿病型で, 空腹時血糖が140mg/dl未満であり, しかも高い2時間値 (空腹時血糖の2.5倍以上) を呈した症例は最も高い肝性脳症発症率と死亡率を示し, 肝機能低下が最も著しく, この群は血中ケトン体比 (acetoacetate/β-hydroxybutyrate) の低下と血漿 amino acid imbalance により, 肝性脳症を発症し易い状態にあると示唆された. これらより経口糖負荷試験は, 肝性脳症や死亡率の予知の指標として有用であることが示された. 肝硬変症における著しい糖代謝障害は, 肝性脳症の発症に関与すると考えられた.