1986 年 83 巻 4 号 p. 771-777
山梨医大第1外科の1983年10月より1985年5月までの20カ月間に行なつた開腹手術症例は291例で, そのうち手術標本を組織学的に検索した282例中54例において日本住血吸虫の石灰化した虫卵を認めた. 虫卵検出率, 19.1%は国内, 特に山梨県内の報告と比べても高率であつた. 臓器別では, 虫卵は肝臓 (22.5%), 十二指腸 (22.7%), 結腸と直腸 (18.8%), 胃 (17.2%) などでは高頻度にみられ, 胆道系 (108例), 脾臓 (31例), 食道 (31例) などでは認められなかつた. この54例の慢性日住症においては, 肝硬変が5例(うち3例は肝細胞癌を併存), 肝線維症が22例に併存し, 疫学的に言われるような日住症と肝細胞癌との密接な関係が示唆された.
日本病理剖検輯報の集計 (1973~1982年の10年間) では, 山梨県内の病院において剖検された症例の20.5%が日住症であつた.