日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
慢性日本住血吸虫症の臨床的意義
日本住血吸虫卵の組織学的検索
吉岡 正和山本 正之松本 由朗関川 敬義江口 英雄三浦 和夫飯村 譲和田 敏史菅原 克彦
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1986 年 83 巻 4 号 p. 771-777

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抄録

山梨医大第1外科の1983年10月より1985年5月までの20カ月間に行なつた開腹手術症例は291例で, そのうち手術標本を組織学的に検索した282例中54例において日本住血吸虫の石灰化した虫卵を認めた. 虫卵検出率, 19.1%は国内, 特に山梨県内の報告と比べても高率であつた. 臓器別では, 虫卵は肝臓 (22.5%), 十二指腸 (22.7%), 結腸と直腸 (18.8%), 胃 (17.2%) などでは高頻度にみられ, 胆道系 (108例), 脾臓 (31例), 食道 (31例) などでは認められなかつた. この54例の慢性日住症においては, 肝硬変が5例(うち3例は肝細胞癌を併存), 肝線維症が22例に併存し, 疫学的に言われるような日住症と肝細胞癌との密接な関係が示唆された.
日本病理剖検輯報の集計 (1973~1982年の10年間) では, 山梨県内の病院において剖検された症例の20.5%が日住症であつた.

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