1986 年 83 巻 5 号 p. 974-983
消化管の血流障害による粘膜の虚血性変化を防御し, 臨床応用の可能性を探る目的で酸素添加 perfluorochemical (以下PFCと略す)乳剤を経腸的に投与する動物実験を行つた. (1) 雑種成犬の上腸間膜動脈を120分間遮断しても, 予め酸素添加PFC乳剤を腸管内に投与してあれば, 粘膜の虚血性変化は軽度であつた. (2) 腸管内に投与された酸素の安定同位体18Oが門脈血から検出された. (3) ラットの上腸間膜動脈を120分間遮断した後解除した場合, 酸素添加PFC乳剤投与群では declamping shock は軽度であつた. (4) ラットに拘束水浸ストレスを負荷した場合, 酸素添加PFC乳剤投与群ではストレス潰瘍の発生が抑制された. 以上から, 酸素添加PFC乳剤の臨床応用の可能性が示唆された.